大三島に移住した某薬剤師の脳みその中

生き物らしく生きたい!と思い大三島へ。毎日が冒険。

薬のシートバラバラ現象

久しぶりに薬剤師っぽいことを。

薬のシートバラバラ現象に物申したい。

 

高齢の方に多いのですが、とにかくご丁寧に一錠ずつはさみで薬のシートをバラバラに切ってくださるんです。

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なんともご丁寧に…

 

手が不自由で小銭を出すのにも苦労されるような方でも、この薬シートバラバラ作業には涙ぐましい努力をされているようです。

高齢の患者さんの残薬を確認させていただいた際、バラバラになっていない方のほうが少ないぐらいです。(個人の感覚ですが。)

 

これが厄介なんですよね…。

ピルケースやカレンダーに日にちごとに分けたり、旅行のために数日分だけ持ち歩きたい、という場合は「バラバラに切る」のは悪くないと思うのですが、そうでない場合はかなり危険なんです。(大きな缶や袋にバラバラにした薬を全部一緒くたに入れて保管している、机の上になんとなくバラバラにした薬を置いている、など)

ざっくり4つぐらいの理由があります。

 

 

 

①患者さん本人で管理しにくくなる

バラバラにすると、種類も数も分かりにくくなるんですよね…。

高齢になると複数の薬を服用されている方がかなり多いと思います。

そういう患者さんがシートをバラバラにすると、あら大変!なことになることも。

切っていないシートならば同じ薬を3個とか4個とか飲んでしまう可能性は極めて低いです。

でも、切ってバラバラにしていると、似た包装の薬を取り間違えて同じ薬を何個も飲んでしまったり、逆に全然飲んでいない薬ができてしまったりします。

当然薬の効き目が強く出すぎたり、副作用が出たり、逆に飲めていないから病状が悪くなったり…。

若いときには想像がつかないかもしれないですが、目が悪くなってくると見間違いってけっこうよくあることなんです。

そして、「自分の判断力が落ちてきている」ことはなかなか理解できなかったり、理解したくなかったり…。

 

②シートごと誤飲する可能性が高まる

えー、そんなことないでしょ!と思うかもしれませんが、シートごと誤飲する事故は年間10件程度は報告されています

大半は高齢者、そしてシートをバラバラにしているケースが多数。

切ったシートはとがっているので食道などに穴があいたり、手術したり入院したり…とおおごとに。

 

③シートの破損→保存性の低下

これ、表立って厚生労働省の報告とかには上がってきてはいない(と思う…)んですが、現場にいるとめっちゃあります!

「シートを切ったつもりで中の錠剤まで切れている」とか、「切ったシートの角が別の薬の包装をやぶいている」とか。

んで、これはただのグチなんですが、「残薬整理」ってのをするときに超めんどくさいんですよ。

バラバラになったシートを種類別に分けて、1つずつ包装に損傷がないか確認して…。

湿気るとダメになる薬ってめっちゃ多いですし、そうでなくても不衛生ですし。

光に弱い薬なんかもありますしね。

あと、「薬が外に漏れだすとヤバい」ってのもありますよね。

何にせよ、危ないです。

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一錠ずつ確認していくのはかなりの手間です。もちろん、仕事なんでキチンとやりますよ、やりますけど、でも、手間なんです。

 

④紛失しやすくなる→子どもやペットなどが飲み込む可能性が高まる

 小さくなることは紛失しやすくなること。

しかも、バラバラだから「なくなっちゃったからつぎのやつ飲んでおけばいいか」という意識になりやすい。

結果、「紛失した薬」はそのまま紛失したたまんま…それを子供やペットが見つけて飲み込むんです。

シートはX線でも見つかりにくいので、子供やペットが「なんか調子が悪そうだな」と思って病院につれていっても結局よくわからず…いつのまにか食道などが傷だらけに…なんてことも。

シートがやぶけてしまっていたら、その薬は子どもやペットには危険な量であったり種類であったり。

 

 

 

そんなこんなで、バラバラにするのは正直オススメしないんです。

「バラバラにしたほうが分かりやすい」ってのは幻想だと思います。

 

あと、

バラバラにすると錠剤やカプセルを押し出しにくいです!!

これ、ほんまです。

指のひっかかる場所が少なすぎて、押し出しにくいんです。

 

 

 

ちなみに、私がおすすめする薬の管理はこれ。

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 「1アサ」なんて小さくてかけないよ!という場合は、ペンの色を変えるでもよし、線とかで印をしてもよし、錠剤の入っているところではなくシートの平らな部分に書くでもよし、その辺は臨機応変に。

ハサミでチョキチョキするより安全で楽ちんだと思います。

 

飲み忘れても「あ、朝の薬飲んだっけ?飲んでないような…でも飲んでたら2錠飲むことになっちゃうな…」なんてこともありません。

動かぬ証拠、朝の薬がシートに残っていますから!!

 

 

 

あとは、薬局で一包化(いっぽうか)してもらうことですね。

 

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一包化のイメージ。ビニールなどの薄い包みに用法ごとにまとめてくれます。

 

 

多少の手数料はかかります(必要だと思われる方にはきちんと保険が使えます)が、少しずつ認知能力が衰えてきた方やシートが固くて錠剤やカプセルを押し出しにくい方、デイやショートステイなどに薬を持っていく必要がある方、ポケットのあるカレンダーでお薬を管理している方などにはおすすめ。

その薬局ごとに違いますが、たいてい「日付」「用法」「お名前」などを機械で印字してくれます。

希望があれば伝えてみてください。

薬によっては一包化できないものもあります(湿気や光にすごく弱い、とても潰れやすい、一緒に入れると化学変化してしまう薬がある、など)が、多くの薬は一包化できます。

 

 

 

現場では当たり前のことでも、案外知らない人はいるようなのであえて書いてみました。

これを読む人だけではなく、その人の家族などのちょっとしたお助けになれば。

 

 

 

それにしてもペンタブたのしい。

(へたくそすぎて見れたものじゃないけれど。)