よ~~~~~く聞く話として
「薬剤師なんて薬の袋詰めをしているだけ」
というのがあります。
まあ、調剤薬局で働いている実感として、たしかに仕事の1/5ぐらいは袋詰めかもしれない。
そこは認めます。
でも、よく考えたら、そもそも論としてですよ、
「みんな薬剤師の使い方を知らない」
んだと思うんですよ。
病院で処方箋をもらって、
薬局に持っていって、
待ってたら薬が出てきて、
ありきたりな説明を聞いて、
お金を払って帰る。
それだけなら、印象としては「薬剤師って薬を袋詰めしているだけ」って感じだと思います。
でも、案外薬剤師って勉強してたりするんですよ。
利用しないと損!
まず、6年間も学校に行って、最低限の生物、化学、物理、数学、医療に関する法律や病気に関する知識は一度は身に着けています。
もちろん現場に出て使わない知識は忘れていきますが、ベースとして比較的網羅的に学んでいるのは確かなことです。
そうじゃないと国試に落ちる。笑
膨大な量の薬のなかでも特に自分が良く取り扱うものの基本的な効能や使用法ぐらいは理解していますし、その数は100品目や200品目とかいうレベルではなくて、かなり小規模な薬局でも500品目、大きい薬局だと1500品目ぐらいは日常的に取り扱っています。
お医者さんと違って、「私は外科!」とか「私は内科!」といった専門分野はないので(対応してきた処方箋の内容や勉強してきた内容によって理解の差はありますが。)、医師ほどの知識の「深さ」はないにせよ「広さ」はあります。
ここで提唱したいのは、「薬剤師に質問する」ということ。
なんでもいいんです。
「なんでこの薬が出たん?」
「テレビでやってるあの健康食品、どう思う?」
「この薬って何の薬?」
「夫と同じ病気なのに私は違う薬を飲んでいるのはなぜ?」
などなど。
大混雑している薬局や、時間帯では十分に対応できないこともありますが、ちょっと暇そうな時間だったら対応してくれると思います。
というか、「さっさと出してくれて何も答えてくれない」のがいいのならそういう薬局や薬剤師のもとに通えばいいし、「質問に真摯に答えてくれる」のがいいのならばそういった薬局や薬剤師のもとに行けばいいんです。
患者さんによって希望は違うと思うので。
で、相談しやすい薬剤師や、相談したときに納得できる返答をしてくれる薬剤師を見つけておくと何かと便利です。
身近な健康相談相手として、たぶん、たぶんですよ、隣のおばちゃんや、怪しい雑誌の宣伝なんかよりはずっと正確だし、個々の状況に応じてきちんと対応してくれると思うんですよ。
たとえば
「グルコサミンやコンドロイチンが軟骨のすり減りにいいって聞いたけれど、実際どうなんかねぇ?」
なんて聞かれたら、私なら、
「効く、という信憑性のおけるデータは出ていません。理論的にも胃や腸でバラバラにされているはずで、軟骨成分を飲んでもそれが軟骨になるわけではないと思いますよ。よっぽど栄養失調でタンパク質とかが不足しまくっているとかならば栄養の補助にはなるかもしれませんが、それも普通に肉や魚食べたらいい話ですし、高いお金払ってわざわざ軟骨成分しか含まれていないサプリを取ってもねぇ…。おまじないとして飲む分にはまあそう大きな副作用も多数報告されているわけではないのでいいんじゃないですか?」
とか身も蓋もないことを平気で言うタイプです。
それでも、「相談してよかった」といわれることも多いですし、「はっきり言ってくれるから納得する」という方とは割と良好な関係を築けていると思います。
もちろん、精神的に疾患を抱えていたり、ご自身での判断が難しそうな方にはこんな言い方はしませんが。
処方に関しても「良い」とか「悪い」という判断はしませんし、そんな言い方は絶対にしませんが、
「こういう検査の結果を重視するとこの処方がされることが多い」
「この薬にはこんなメリットがあるのでおそらくそういったことを先生は重視しているのでは?」
「最近の治療方針ではこういったデータが出たという報告からこの組み合わせで処方を組み立てるのが一般的」
といった言い方で、なるべく納得して薬を飲んでもらえるように「聞かれれば」説明をしているつもりです。
そうなんです、「聞かれれば」なんですよ。
あんまり聞きたくない人にわざわざ長い説明をするのはかえって逆効果なので。
聞いてほしいところすら聞いてくれなくなるので。
最低限のことを質問・確認して、説明・注意して、ハイ、さようなら、のほうがいいんです。
だからこそ、ぜひ、薬剤師に「質問してほしい」んです。
質問されなければ真価を発揮しにくいんです。
いろいろ質問されたら、
「どうしても薬の数を減らしたいならばコレとかコレは優先順位としては低そうなので、先生と相談してみる価値はあるかもしれません。あと、これは実は粉じゃなくて錠剤もあるのでそっちのほうが飲みやすいかも?もしよかったら先生にお手紙書いておきますよ??」
とか
「こういった運動とか食事とか習慣を変えることが症状改善につながる可能性があるので、試してみてもいいかもしれませんよ。」
なんて返答をすることもあります。
(こういった内容になると医師に処方に対する難癖ととられる可能性もあるので、患者さんが板挟みにならないようによく考えて、状況を見たうえで言うようにはしています。)
薬剤師も個々のシチュエーションもさまざまなので、いろんな返答のパターンがあります。
そこで大事なのは、その返答をきいて「この薬剤師は使えそうだ」と思うか、「この薬剤師はポンコツ…」と思うか、そういった素直な気持ちだと思います。
たとえば、私の返答は正直やさしさには欠けることが多い、と自己評価しています。
先述のようなやりとりでも、「膝の痛み、つらいですよね」とか「最近よく宣伝してますもんね、頼りたくなりますよね~」とか言えたらいいのに、どうもそういうフワッと優しいセリフはあんまり出てこないほうです。
まずは受容、傾聴…心に留めてはいますが、まあ、素質や性格の問題もあるので、おっとり優しい系薬剤師にはおそらく一生なれません。(見た目の問題も大きいですよね。人は見た目が9割というのも事実。)
それが嫌な患者さんはそれはそれでいいと思います。
相性って絶対あるので。
人でも動物でも物でも。
気に入った薬剤師は「かかりつけ薬剤師」にしてもらえると嬉しいです。
「かかりつけ薬剤師」は制度としても実はあるんですよ。
要は指名料を払えば基本その薬剤師があなたの服薬情報を一元的に管理しますよ、といったものです。
ですが、必ずしもこの制度上の「かかりつけ薬剤師」を使ってください、ということではありません。
(もちろん指名料払ってまで私を使ってくれる患者さんには感謝感激雨あられですが。あ、指名料は別にその薬剤師に払われるものではありませんよ。あくまで「一元管理」の手数料です。)
いつもの薬をもらいに行くときに、手が空いてそうな感じなら「お気に入り薬剤師」に声をかけて、ちょっとした質問をしたり、体調を伝えたりしてくれると嬉しいんです。
身近な健康相談相手としてうまいこと薬剤師を使ってほしいなぁ。
そう思ってやまないのです。