薬剤師だし、
会社の方針には素直に従うほうだし、
今後の医療保障のために今何ができるか考えるのは超大事。
…だと思っているけれど。
でも、わりと最初のほうから「ジェネリックは無理ゲーなんじゃないか」と思っていたほうです。
まず、ジェネリックに関してめちゃくちゃ雑におさらいしてみましょう。
詳しく知りたい人はこのへんでもさらっておけばおK。
要は公式見解ですからね。
私めら、保険薬剤師は厚生労働省サマの手足というかイヌというか、まあそういう立場ですので、これ以上オフィシャルな説明は私にはできませんことよ。
さて、某薬剤師的超雑な説明をするとこんな感じです。
名前:正しくは「ジェネリック医薬品」
どんなものなのか:特許が切れた薬を特許を持たないほかのメーカーが売り出した薬のこと
先発品と何が一緒で何が違うのか:
一緒:有効成分の含有量や放出速度は実験で同一であることが証明されている
違う:圧倒的に安い、デザインや飲みやすさなどが違うことが多い、有効成分以外の成分(かさを増すためのものや、色付けに使うものなど)が違うことがある
某薬剤師はどう考えているのか:
自分の薬は迷わずジェネリックを選択しています、安いから。めちゃくちゃ繊細な病気も抱えていないので。
患者さんには勧めるときもあれば、勧めないときもあります。
勧めるとき:長期にわたって使用するので支払いに大きな差が出るとき、風邪薬などごく一時的なので先発だろうがジェネリックだろうがぶっちゃけたいして変わらないとき、生活保護者(国のきまりで原則ジェネリックなんです)、製剤工夫がしてあるジェネリックのほうが飲みやすいとき(子供の粉薬が苦くなくなっていたり、錠剤が小さくなっていたり、先発品よりあとに出てきたジェネリックのほうが工夫されていることが多い)、特にこだわりがない患者さんだったとき(安いほうがいいでしょ、薬局的にもメリットがあるし)
勧めないとき:強いアレルギー体質などでほんの些細な変化でも影響がでそうなとき、皮膚科の薬などで使用感が大きく異なるとき(有効成分以外の成分は異なることがあるので、硬さや伸びなどが違うことがある)、心理的に見た目や色などが変わると体調が変わってしまう患者さんであるとき(精神科の薬などは心理的な部分もとても重要)、患者さんが嫌だと思うとき(無理には勧めません)、医師から「この薬は先発で」と指示や打ち合わせがあったとき(あえて尋ねはしませんが、何か深い理由があるんでしょう)
なぜ保険薬剤師はやたらジェネリックをすすめるのか:
勧めないとペナルティを受けるし、たくさん使ってもらえるとご褒美がもらえるから。え、誰からって?国からですよ。国から。
ではなぜ国はやたらジェネリックをすすめるのか:
高齢化と医療の高度化で医療費爆上げ、少子化で労働者が減って保険料の取りどころに限界が。そもそも景気もずっと悪くて慢性的な金不足(まあ、金不足ととらえるか、流通不良ととらえるか、そのへんの議論は専門外なので経済学者にでも訊いてください。)で、いろいろ無理ぽだから。
なるべく安い薬を使ってもらい、医療費爆上げがチョイ上げぐらいにならんか、ということです。
さて、詳しいことはこれ以上必要ないのでとりあえず「ジェネリックってなんやねん」の部分は以上にして、なぜ、某薬剤師は「ジェネリックは無理ゲーなんじゃないか」と考えているかについて。
そもそも、日本の人口というか、経済圏というか、そういうものがとにかく中途半端。
ジェネリック云々に関しては欧米から取り入れたやり方なんですが、欧米はそもそも人口すごいし、超セレブから超貧民までありとあらゆる人がいて、経済圏もでかくて、ベンチャー企業とかも日本みたいになんでもかんでも規制規制フルボッコというわけでもなくいっぱいいるわけですよ。
だからこそ競争原理が働くし、いろんな差別化に意味が出てくると思うんですよね。
生命にかかわるものだから、さすがに「粘土固めて薬の形にして売る」とか「1錠ごとにまったく成分量が違う」とか「やばい不純物が結構入っている」みたいな会社は撲滅すべくお上の一定の介入はあるけれど、市場がでかいがゆえに参入企業の数は多いし、安い薬を求める人も高い薬を求める人もそれなりにいるので多様性も生まれて、どれもそれなりに生き残っていくわけです。
あ、まったく話がそれるんですが、参考までに読んだFDA(アメリカの厚生労働省)の「ジェネリックってなんやねん」のページ、絶妙に英語が簡単、というかきれいでリーディングの練習にピッタリでした。
で、ですよ。
日本の場合、皆保険制度で、医薬品の値段は公定価格なんですよね。
しかも、その値段が毎年更新されて、徐々に安くなるシステムをとっています。
なので、先発品を作る会社ですら何年も薬を売っているとどんどん安くなってジリ貧、ジェネリックを作る会社はもともと価格が安く設定されるがゆえに何年も薬を売っていると丸損になるほど安くなってしまったりするわけです。
そうなると、製造をやめますよね。ジェネリックなんてばかばかしくて作ってらんねーや、となりますよね。
実際、ここ数年でいろいろあっていろいろ製品がなくなっています。
小林化工の不祥事がことの発端とは言えますが、たぶんこれがなくてもあと10年もしないうちにどこかの会社が無理な営業をして不祥事をおこしたり、あれこれ原価割れして製造中止になったりしていたでしょう。
ある意味先発+ジェネリック多種類、というのはリスクヘッジとしても、選択肢があるという意味でもとてもいいのですが、最近は先発+ジェネリック大会社の2,3種、みたいになってきているので、どこかのメーカーが急に作るのをやめたり、いろいろな事情(原料は海外調達のものが多いので、どこかが戦争始めたりするだけでも影響を受けたりします。)で十分に作れなくなったりすると途端に流通が死ぬ状況になっています。
公定価格だから円安になって原料が高くなっても損を被るのはメーカーだし、製薬会社は苦しい時代ですよね。
通常の資本主義でいけば、価格設定は自分でできるし、利益が出るものはどんどんシェアをとって、利益の出ないものはバッサリ捨てたりどこかの会社に技術を売ってしまったりすればいいのですが、医薬品はそれができない。
そうなると、そもそも安いジェネリックなんてほんと商売として詰んでいるようにしか思えないんですよ。
日本程度の規模だと、体力のある会社が結局ほぼすべての市場を占めてしまって、いろいろ選べるわけでもない、どこかの製品がポシャッたときにもうどうしようもない、なんなら先発ですら不足する、みたいな事態になってしまうわけです。
で、これからどうすればいいのか、という提案は眠いのでもう出てきません。
ジェネリックのない日本にはもう戻れないし、余裕のある価格設定もまず無理。
そもそも医療費削減だ!健康年齢を伸ばすアレコレ!もたかが知れているし、かといって高齢者を姥捨て山に捨てに行くみたいな極論になってもいけない。
少子化が解決する方法は何かあるのなら教えてほしい。
個人的にはセックス離れ世代の気持ちのほうがよくわかるので、これってもう絶滅に向かう民族として仕方がないのかとあきらめている部分もある。
本来薬って貧乏人には手の届かないものなんですよね。
当たり前のように手に取れる、本当にいい時代になったなとは思っています。
でも、安すぎるんちゃうか、とは正直思っています。
今時、食料品少し買っただけでも1回500円とか1000円ぐらいにはなるのに、山盛り薬をもらってもひと月1000円ぐらいで終わってしまう高齢者を見ると、複雑な気分になります。
公共的な医療福祉は絶対必要だけれど、いいかげん「ナンボかは自分で備える」みたいな考え方も必要なんじゃなかろうか。
明るい話が一つもできずに真っ暗になってしまいましたね。
夜なので仕方ないです。
ポジティブゥゥゥゥ!!なことなんて夜に考え付かないです。
おやすみ宇宙。